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11月 23 2010

僕らが作ったギターの名器

ASIN 4166607707

散歩中に立ち寄った書店で目に留まり、数ページ斜め読みするうちに、たちまち感動して即購入。

というのも、私が愛用しているディアンジェリコというギターブランドを通して、本書とは深い縁があるからだ。

ディアンジェリコというのは、その昔ニューヨークで活躍していた伝説のギター職人の名前(ジョン・ディアンジェリコ)。彼の作るギターはタイプによって「ニューヨーカー」「エクセル」などいくつかあった。ディアンジェリコは1964年に亡くなったが、ジェイムズ・L・ダキストという優秀な弟子がいて、彼が後を継ぐと思われていた。だが、ダキストは他人にだまされて工房とブランド引き継ぎの費用を払えなくなってしまい、ディアンジェリコ工房と道を分かつ(*1)。以後、ディアンジェリコ工房のギターは品質の低下に悩まされる。困ったディアンジェリコ工房の後継者は、情熱と才能と人柄を見込んで、ライセンス生産をある日本人にお願いした。それがこの本の著者なのである。

著者の椎名氏は、ディアンジェリコの件だけでなく、カスタムギターで有名なESP、今でもマニアに人気のギターブランドであるベスタグラハムやH.S.アンダーソン、DJ機器で世界的に人気のVestaxなど、有名な楽器メーカーをいくつも立ち上げている。

ディアンジェリコはジャズギターに興味がなければ知らないだろうが、ESPやVestaxは多くの方がご存知だろう。

そういう人の自伝的な本だから、当然自慢だと受け取られるような話も多いわけだ。だが、それがまた気持ちよい。著者は言葉にいやみがなく、誰に対しても、何事に対しても真摯なので、自慢もそれほど気にならない。そもそも、世界に誇れるような素晴らしいことをやったのだから、多いに自慢してくださっても結構なのである。音楽産業・楽器産業の盛衰を目の当たりにして、それでも流行り廃りに迎合することなく、常に筋を通してやってきた一流の人物の、その筋の通し方に感じ入る。ありのままの経験と自分の言葉で本を書く、その姿にもまた感じ入る。

こういう情熱と真摯さをもって自分は何かに打ち込んでいるだろうかと考えるだけでも、本書はお金を出して買って読む価値がある。音楽が好きだったり、楽器を弾いている方、楽器を作っている方ならなおさらである。

ギターの歴史やパーツの説明、木材の特性などの話も興味深く読んだ。

なお、私の「日本製」ディアンジェリコは、どこに行っても「いい音だ」「弾いたときの反応がいい」「ネックの感触がいい」「見た目がカッコイイ」などと褒められる。ディアンジェリコ本人製作品の5分の1から10分の1の値段で、これだけ評判のよい、素晴らしいギターを手にすることができたのは、まさに著者のおかげであり、心から感謝したい。今後はこのギターに恥じないよう、演奏も、奏者のルックスも、褒められるようになりたいものである。

*1 ダキストはその後、ディアンジェリコに引けを取らない高名なギター職人となった。1995年没。彼のギターはジム・ホールなどが使用していることでも有名。

2 comments

  1. 前田

    大村様

    初めてご連絡させて頂きます。前田と申します。
    私は現在、D’Angelicoのウェブサイトを作成しており、大村様に
    D’Angelicoユーザーとしての意見をお聞かせさせて頂きたいと考えております。
    もしご興味がございましたらメールをお送り頂いてもよろしいでしょうか。
    ウェブサイトを張り付けておりますのでよろしければご確認ください。
    何卒ご確認の程よろしくお願い致します。

  2. 大村

    前田様
    ウェブサイト拝見いたしました。
    私のようなものでお役に立てることがございましたら、ディアンジェリコの熱烈なファンの一人として、ぜひ協力させていただきます。
    どうぞよろしくお願いいたします。

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